飲食店の新卒3年以内離職率は49.9%|初めて5割を切った

厚生労働省が2026年10月23日に公表した最新データで、飲食店を含む宿泊業・飲食サービス業の新卒3年以内離職率は、大学卒49.9%、高校卒61.6%となりました。大学卒が初めて5割を切りました。

ただし、産業別では高卒・大卒とも依然1位です。下がったが、まだいちばん高い。これが今年のデータの正確な読み方です。

この記事では、最新の数字、年間離職率との違い、そして自社の新卒が3年後に何人残っているかを数える方法を扱います。


飲食店の新卒3年以内離職率は、最新データで何%か

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」(2026年10月23日公表)によると、就職後3年以内の離職率は次のとおりです。

区分大学卒高校卒
宿泊業,飲食サービス業49.9%(前年から5.5pt低下)61.6%(前年から3.1pt低下)
全産業31.2%(2.6pt低下)36.9%(1.0pt低下)

全産業と比べると、大学卒で約1.6倍、高校卒で約1.7倍です。

産業別では、高卒・大卒とも1位

順位大学卒高校卒
1宿泊業,飲食サービス業49.9%宿泊業,飲食サービス業61.6%
2生活関連サービス業,娯楽業49.8%生活関連サービス業,娯楽業61.1%
3教育,学習支援業42.3%医療,福祉49.4%
4医療,福祉39.1%教育,学習支援業49.3%
5小売業38.1%小売業48.5%

2位の生活関連サービス業,娯楽業とは、大学卒で0.1pt差、高校卒で0.5pt差です。ほぼ並んでいます。


大卒が初めて5割を切った。これをどう読むか

前年の55.4%から5.5pt低下。これは産業別で最大の下げ幅です。2位の生活関連サービス業,娯楽業も4.9pt下げています。

つまり飲食業は、いちばん高いが、いちばん改善している産業でもあります。

「高いまま」と言うのは、今年については正確ではない

飲食業の離職率を語るとき、「高い水準が続いている」という書き方が一般的です。今年のデータについては、それは半分しか合っていません。

  • 5割を切ったのは初めて
  • 下げ幅は産業別で最大
  • それでも順位は1位のまま

3つを並べて初めて、現状が正しく伝わります。

下がった理由は、公表資料には書かれていない

なぜ下がったのかは、この調査からは分かりません。 この調査は、ハローワークに提出された雇用保険の加入届をもとに離職者数を推計するもので、設計上、辞めた理由の分析を含みません。労働時間の是正、初任給の引き上げ、採用時のミスマッチの減少など、いくつもの要因が考えられますが、公表資料が示しているのは離職率の数字だけです。

ここは自社の判断に関わります。業界全体が改善していても、自社の新卒が同じように残っているとは限りません。業界の数字が下がったことを、自社の定着が進んだ証拠として読まないでください。 自社の数字の確かめ方は、このあとの章で扱います。


「年間離職率」と「3年以内離職率」は、別の数字

飲食店の離職率を調べると、23.7%や25%前後の数字も出てきます。今回の49.9%とまったく違いますが、どちらも正しい数字です。測っているものが違います。

年間離職率3年以内離職率
調査雇用動向調査新規学卒就職者の離職状況
数え方1年間に辞めた人 ÷ 年初の常用労働者数同じ年に入社した新卒のうち3年以内に辞めた人の割合
対象全従業員(パート・アルバイトを含む)新卒のみ
見方ある時点の状態(ストック)入社年ごとの追跡(コホート)

年間離職率が23.7%でも、新卒だけを3年追えば約半分が辞めている。 矛盾ではありません。

自社でこの2つを混同すると、判断を誤ります。「うちの離職率は20%台だから業界平均並み」と言っているとき、新卒だけを数えたら半分辞めていた、ということが起こり得ます。

年間離職率の見方と自社での測り方は、飲食店の離職率を下げてアルバイトを定着させる方法で扱っています。


規模が小さいほど辞める。ただし大卒の5人未満だけ増えている

事業所規模別の3年以内離職率は次のとおりです。

事業所規模大学卒高校卒
5人未満58.2%(0.7pt上昇)61.3%(1.9pt低下)
5〜29人50.6%(1.4pt低下)53.3%(1.3pt低下)
30〜99人39.7%(2.2pt低下)45.5%(0.3pt上昇)
100〜499人31.7%(2.2pt低下)36.4%(0.3pt低下)
500〜999人29.0%(2.5pt低下)29.4%(0.5pt低下)
1,000人以上24.2%(2.8pt低下)24.4%(1.9pt低下)

規模が小さいほど離職率が高く、1,000人以上と5人未満では大学卒で34ptの開きがあります。

全体が改善するなかで、大学卒の5人未満だけが増えています(0.7pt上昇)。 小規模の事業所では、改善の流れが届いていない可能性があります。

なぜ小さい事業所ほど高いのか

規模そのものが原因とは言い切れません。その理由も、この調査からは分かりません。 ただ、別の調査に手がかりがあります。

厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」(2026年7月31日公表)によると、計画的なOJTを実施していない事業所の割合は、事業所規模30〜49人で42.5%、1,000人以上で6.3%です。OFF-JTでも34.8%対3.0%と、同じ方向に開いています。

同じ表には、離職率階級別の集計もあります。計画的なOJTを実施していない事業所の割合は、離職率2%未満の事業所で20.9%、30%以上の事業所で48.2%。辞める職場ほど教えていない、という関係が、同じ調査のなかに出ています。

ただし、飲食業が「教えていない」わけではない

ここは誤解されやすいところです。同じ調査を産業別に見ると、計画的なOJTを実施していない事業所は、宿泊業・飲食サービス業で26.0%、飲食サービス業だけなら20.7%。どちらも全産業の35.8%を下回ります。同じ分類でも宿泊業は49.5%で、飲食とはかなり差があります。

飲食業は、教えていないわけではありません。それでも離職率は産業別で1位です。このあと見る民間調査でも、「辞めようかな」と思った場面の上位にオリエンテーション・研修(17.2%)が入っています。研修がないから辞める、という話ではありません。

ただし、この数字には読み方の注意があります。能力開発基本調査の対象は常用労働者30人以上の事業所です。飲食は個人店や小規模店の比率が高い産業なので、30人以上に限った集計では「教えている」側に寄って見えます。離職率がいちばん高い5人未満の事業所は、この調査には入っていません。

そのうえで、実施の有無だけを見ていても足りない、という手がかりがあります。初職が正社員だった若者を「離職した人」と「いまも勤続している人」に分けて、初職の職場を比べた調査です。離職した人の職場は、教育訓練と職場コミュニケーションの両方に乏しいという共通点が報告されています(労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.250」2025年3月19日公表。20〜34歳7,994人への調査)。

研修をやったかどうかではなく、教えることと、日々の関わりがセットになっているか。 店舗数や人員規模はすぐに変えられませんが、ここは変えられます。


自社の新卒は、3年後に何人残っているか

業界水準を知ったら、次は自社の数字です。年間離職率を見ていても、新卒が3年でどれだけ残るかは分かりません。

数え方は3ステップ

  1. 3年前(2023年4月)に入社した新卒の人数を出す
  2. そのうち今も在籍している人数を出す
  3. 「辞めた人数 ÷ 入社した人数」が、自社の3年以内離職率

名簿を見れば出ます。難しいのは計算ではなく、入社年ごとに人を追いかける習慣がないことです。

年ごとに並べると、効果が見える

2021年入社、2022年入社、2023年入社と並べると、施策を打った年の前後で変化が見えます。1つの年だけでは、たまたまなのか傾向なのかが分かりません。

bottoのカスタマーサクセスでの顧客支援の現場では、この数字をすぐに出せる会社はほとんどありませんでした。毎年採用しているのに、何人残ったかを数えたことがない、という状態です。

1年目・2年目・3年目に分ける

3年で半分が辞めるとして、それが1年目に集中しているのか、3年目に多いのかで打ち手が変わります。合計だけ見ていると、どこに手を入れるべきかが分かりません。

全産業の令和5年3月卒では、大学卒で3年以内離職の約3分の1、高校卒で約半分が1年目に起きています。自社の内訳がこれより1年目に寄っていれば、入社直後の受け入れに原因がある可能性が高くなります。


新卒はなぜ辞めるのか|支援の現場で多いのは「放置」

給与や労働時間は、よく挙がる理由です。ただ支援先の現場で見てきた限り、新卒の離職が多いのは、放置されている場合でした。

辞める前にあるのは、次の2つの不安です。

  • 作業への不安。この仕事をこのやり方でいいのか、自分はできているのかが分からない
  • 自分への期待・役割への不安。何を期待されているのか、どこまでできれば認められるのかが分からない

そして、この不安が解消されないまま時間が過ぎます。

問題は不安があることではなく、放置されること

新人が不安を持つのは当然です。問題は、しっかりフォローアップできていないこと、つまりほったらかしにしてしまうことにあります。

忙しい店舗では、新人は「手が空いたら教える」対象になります。教える側に悪意はありません。ただ、新人の側からは「誰も見ていない」と映ります。

待遇の問題として処理すると、打ち手を間違える

辞めた理由を「給与が低いから」で片づけると、打ち手は賃上げになります。しかし不安を放置したことが原因であれば、賃金を上げても次の新卒が同じ辞め方をします。

辞めた新卒がいたら、退職の直前ではなく、入社直後に何があったかを振り返ってください。

辞めるのは1年目、辞めようと思うのは1〜3か月目

厚生労働省のデータでは、令和5年3月卒は1年目の離職がいちばん多いです。令和5年3月卒の大学卒は3年以内離職31.2%のうち1年目が11.0%、高校卒は36.9%のうち1年目が17.4%。高校卒では、3年以内に辞めた人の約半分が1年目に辞めています(いずれも全産業の数字です)。

ただし、辞めようと思うのは、もっと早い。 新卒3年未満で辞めた18〜25歳706人への調査(業種は限定なし)では、初めて「辞めようかな」と思った時期は1か月未満で32.9%、3か月未満で51.0%でした。半数が、入社3か月のうちに一度は考えています(スタッフサービス・ホールディングス、2025年7月22日公表)。

同じ調査で、「辞めようかな」と思った場面の上位は、オフィス内の職場環境や雰囲気を知った時(23.3%)、オリエンテーション・研修(17.2%)、所属部署への着任時(10.8%)でした。残業や休日出勤も同率3位(10.8%)に入りますが、上位に並ぶのは待遇よりも、職場の空気と受け入れられ方です。

離職が数字に出るのは1年目。引き金が引かれるのは、その前の数か月です。 だから本部が手を入れるべきなのは、辞表が出てからでも半年後の面談でもなく、入社直後の数週間になります。

本部が現場の状態をどう把握するかは飲食店のSVの役割と育成方法、日々の状態を見る仕組みは飲食店の日報の書き方で扱っています。


新卒の定着を、入社1か月から設計する

不安を放置しないために、本部が先に決めておくことがあります。

入社1か月で決めておくこと

  • 1か月で何を習得してほしいかを、項目として書き出してある
  • それぞれに期限(入社何日目まで)がついている
  • 誰が教えるかが決まっている(手が空いた人、になっていない)
  • 教えた日・確認した日を記録する場所がある
  • 1週目・2週目・3週目・1か月の節目に話す機会が決まっている
  • 良し悪しの基準が、店舗ごとにばらついていない

店長任せにしない

この6つは、店長個人の工夫ではなく本部が決めることです。決まっていなければ、店舗ごとに新人の育ち方が変わります。

新人教育を仕組みにする考え方は飲食店の新人教育はなぜ必要?で解説しています。

入社1か月の計画を1枚のシートに並べるための新人教育チェックシートを無料で配布しています。習得項目・期限・評価を入れると進み具合が見える形になっており、自社に合わせて項目を書き換えて使えます。


よくある質問

飲食店の新卒3年以内離職率は何%ですか?

2026年10月23日公表の最新データ(令和5年3月卒業者)で、宿泊業・飲食サービス業は大学卒49.9%、高校卒61.6%です。全産業はそれぞれ31.2%、36.9%で、飲食は産業別で1位です。

飲食店の離職率が23.7%と書かれている記事もありますが、どちらが正しいですか?

どちらも正しく、測っているものが違います。23.7%前後は雇用動向調査の年間離職率(1年間に辞めた人の割合、全従業員が対象)、49.9%は新規学卒調査の3年以内離職率(同じ年に入った新卒を3年追った割合)です。

新卒の離職率は改善しているのですか?

大学卒は前年の55.4%から49.9%へ5.5pt低下で、これは産業別で最大の下げ幅です。ただし産業別の順位は依然1位です。改善した理由は公表資料に記載がないため、特定はできません。


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