「人手不足なので、解決のためにモバイルオーダーを導入したい」
このように考える飲食店も多いのではないでしょうか?確かにスタッフがオーダーを取る必要がなくなるので、一時的には負担が軽減されるかもしれませんが、長い目で見るとスタッフがお客様を見なくなる可能性もあります。
本記事は『サービスのチカラ』の著者である遠山 啓之氏監修のもと、飲食店のモバイルオーダーと接客について解説します。モバイルオーダーと接客の融合で、繁盛店をつくりたいと考える人は必見です。
■この記事の監修者
遠山 啓之(とおやま ひろゆき)
- 株式会社LEAD LIVE COMPANY 取締役副社長
- 一般社団法人レストランテック協会 顧問
- 居酒屋甲子園 アドバイザー
- 自称『サービスオタク』
株式会社グローバルダイニング、株式会社プレジャーカンパニーと飲食業界の現場で20年以上接客と教育に携わり、2020年11月【株式会社LEAD LIVE COMPANY】創業。
『見えない接客の見える化』『誰でもわかる!すぐできる!』をテーマに、研修やセミナーを年間100件以上のペースで開催。
学校の臨時講師、大手通信企業接客研修など、業界・業種を超え活躍中。
飲食店でモバイルオーダーが増えた理由
日本の飲食店でモバイルオーダーが急速に拡がったのは、新型コロナウイルスの影響で、スタッフとお客様の接点が持ちにくくなったためです。感染予防の観点から、スタッフと非接触でオーダーできるため、急速に普及しました。
海外ではハンバーガーショップなどの店前の機械でオーダーしてからレジに取りに行くシステムがありましたが、日本でモバイルオーダーが普及したのはごく最近だといえるでしょう。
モバイルオーダー導入のメリット
主なメリットはいくつかありますが、今回は2つ取り上げます。
- 人手不足の解消につながる
- ヒューマンエラーが少なくなる
それぞれのメリットを掘り下げて確認していきましょう。
人手不足の解消につながる
モバイルオーダーはお客様自身が端末を使って注文するため、ホールスタッフがオーダーテイクする必要がありません。システムで自動的に料金が計算されるため、会計時の計算も不要です。ホールスタッフを必要最小限に抑えることで、キッチンに人員を割り当てるなど戦略的な配置ができるようになります。
人手不足の解消につながるシステムのひとつとして注目されています。
ヒューマンエラーが少なくなる
モバイルオーダーを活用することで、オーダーの聞き間違いなどのヒューマンエラーを少なくできます。仮にお客様から「この料理は頼んでないよ」と言われても、送信されたオーダー情報が残っているため、トラブルに発展することは稀です。
ヒューマンエラーの心配が少なくなることで、スタッフの心にも余裕が生まれます。笑顔が出やすくなるので、お客様からの印象もよくなるでしょう。
モバイルオーダー導入のデメリット
主なデメリットの代表例は、以下の2つです。
- 何が売りのお店かわかりにくくなる
- スタッフがお客様を見なくなる
モバイルオーダー導入時はデメリットを把握して、慎重に判断する必要があります。それぞれのデメリットを確認していきましょう。
何が売りのお店かわかりにくくなる
お客様とスタッフのオーダー時の接点回数がなくなります。おすすめの料理を提案する機会も少なくなるため、何が売りのお店かわかりにくくなるかもしれません。
モバイルオーダーを導入してお客様との接点が減ると、魅力的な料理以外は印象に残りにくくなります。導入の際にはおすすめするタイミングや仕組みを考えておく必要があります。
スタッフがお客様を見なくなる
お客様自身が端末で注文するモバイルオーダーは、一歩間違うとスタッフがお客様のことを見なくなる可能性があります。
オーダーを取らなくなりお客様との接点が少なくなると、何をしたらよいかわからなくなるスタッフが出てくるかもしれません。目の前のお客様から注文したいとお声がけされても、「オーダーは端末から操作してください」と返すこともあるでしょう。
お客様を見ないことは、接客の本質から大きく外れている状態です。モバイルオーダー導入時は、接客をどうしていくかをお店で話し合い、本質から外れないように注意しましょう。
モバイルオーダーと接客を融合させる方法
モバイルオーダーを導入する際は、お店の接客と融合させていくためにはどうすればいいのかを考えることが大切です。モバイルオーダーと接客を融合させるポイントには以下があります。
- 商品説明・セールストークを磨く
- オーダー以外の接点を大切にする
- お客様と一緒に楽しむ接客を意識する
それぞれのポイントを取り入れることで、モバイルオーダーとスタッフが共存できるようになるでしょう。
商品説明・セールストークを磨く
モバイルオーダーを導入する場合は、オーダー以外の接点での商品説明とセールストークが必須です。
紙媒体のメニューブックであれば、写真や説明文章を多く盛り込むことで、スタッフの知識がなくてもお客様に良い点を伝えられます。逆に簡単な写真と文字だけのメニューの場合は、スタッフが補足説明で魅力を伝えなければなりません。
モバイルオーダーはパッケージのシステムが多く、文字がメインで簡易的なメニューになるため、商品の魅力が伝わりにくくなります。料理提供のときに意識的に次の料理をおすすめするなど、セールストークを磨いていくことが大切です。
オーダー以外の接点を大切にする
オーダーをお客様にお任せするモバイルオーダーでは、オーダー以外の接点でお客様に魅力を感じていただく必要があります。料理提供時の商品説明やセールストークの他に、店内をラウンドしながらお客様のことを観察して、変化を察知することが大切です。
例えば、端末を見て難しそうな顔をしたお客様がいれば、積極的に「何かお困りですか?」とお声がけすることで、お客様の悩みごとを解決できる可能性があります。
モバイルオーダーの導入でお客様を観察する時間が増えますので、より敏感にお客様のご要望を感じ取れるようにアンテナを張りましょう。
お客様と一緒に楽しむ接客を意識する
お客様と一緒に楽しむ接客ができれば、モバイルオーダーの導入でファンやリピーターを獲得できます。
シーザーサラダにチーズをかける、お客様の目の前で料理を炙るなどの仕上げパフォーマンスはお客様の印象に残りやすい料理です。人手不足や新型コロナウイルスの影響でパフォーマンスできなくなったお店も多いですが、モバイルオーダーを導入することで、これらのパフォーマンスを復活させることも可能です。
料理の再設計の他にも、お客様と一緒に写真を撮ったり、提供する料理に関するクイズを出題したりとお客様と一緒に楽しむ接客ができれば、印象に残るお店づくりができます。
モバイルオーダーは接客を再設計するチャンス
モバイルオーダーを導入する際は、お店にとってのメリットとデメリットを話し合うことが大切です。人手不足や人件費など目先の課題ばかりを考えると、ファンやリピーターをつくる接客ができなくなります。
接客の本質は「どうやったらお客様に喜んでもらえるか?」「何かお困りごとはないか?」というホスピタリティマインドです。モバイルオーダーと接客の本質を融合させることで、お客様が「また来たい!」と思うお店に近づけるでしょう。
モバイルオーダーはこれまでの接客を再設計するチャンスでもあります。お店のファンやリピーターを増やすためにも、ホスピタリティマインドを持った接客を行い、お客様の印象に残るお店づくりが大切です。